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抗がん剤投与前に確認・評価すべきこと

押さえておきたい基本的知識

抗がん剤治療において、副作用の発現は薬の効果と共に患者さんが最も気にする事柄です。できることならば副作用のない治療を受けたいところですが、なんらかの副作用症状が発現することがほとんどです。過去のデータから発現が予想される副作用について事前に評価し、対応することで重症化が防げる場合があります。抗がん剤による副作用対策について書かれた書籍や私の経験から、以下の項目について事前に確認し、評価し、対策するとよいと思われることを挙げてみました。

抗がん剤治療の前に確認するとよいこと

  • ▢ B型肝炎ウイルス再活性化のリスク(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体の有無)
  • ▢ 口腔粘膜炎の予防として歯科を受診し、口腔ケアを開始
  • ▢ 治療方法選択の妥当性(内服併用レジメンにおける服薬管理能力の評価など)
  • ▢ 前治療の副作用の有無と薬剤の整理、休薬期間が十分か確認
  • ▢ 悪心・嘔吐のリスクを考慮し、標準的支持療法でよいか評価
  • ▢ 併存疾患治療薬との相互作用の有無(ワルファリンのコントロールなど)
  • ▢ 腎機能、肝機能を考慮した初期投与量の確認
  • ▢ 血栓・塞栓症の有無の評価(D-ダイマーの測定)

使用する抗がん剤の特徴的な副作用の事前評価

  • ▢ 発熱性好中球減少症、骨髄抑制のリスク:MASCCスコアの実施
  • ▢ 皮膚障害:好発部位の確認(手、足などのベース状態を把握し、場合によっては皮膚科へ受診する
  • ▢ 口腔粘膜炎:口腔内の観察(コロナ禍のため十分な対策が必須)
  • ▢ 排便状況(下痢または便秘):コントロール不良であれば調整
  • ▢ 間質性肺炎の既往:発現頻度の高い抗がん剤については血液検査、CT等で専門医による事前評価
  • ▢ 血糖コントロール:今後、制吐薬としてデキサメタゾン長期使用により影響がでる可能性がある
  • ▢ 心疾患の有無、心機能の評価:アントラサイクリン系の累積投与量
  • ▢ その他(血圧、脱毛、しびれ、味覚障害、筋肉痛、関節痛など):併存疾患として治療中または既往のある症状が増悪の可能性
  • ▢ 血栓・塞栓症の評価(プラチナ系、タキサン系、血管新生阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬、免疫調節薬(サリドマイドなど)などが血栓発症の頻度が高い)

以上、挙げてみました。これらをあらかじめ考慮し、対応することで患者さんの治療が上手く継続できることを期待しています。

(2021年5月30日 更新)

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