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糖尿病と抗がん剤治療について

押さえておきたい基本的知識

抗がん剤治療が開始になる患者さんの中で併存疾患として糖尿病を患っている方や治療後に副作用によって高血糖をきたす又は糖尿病を発症する方がおられます。

もともと糖尿病がある場合は、抗がん剤投与による悪心・嘔吐対策として予防や治療目的に使用するステロイド(デキサメタゾンなど)によって高血糖になったり、悪心・嘔吐の発現や味覚障害の発現のために起こる食事摂取量の低下による低血糖を起こるおそれがあります。

制吐療法診療ガイドライン2015年版ver.2には、中等度リスクのレジメンにおいて「糖尿病などの併存症によってデキサメタゾンの使用が制限される場合,2~3 日目のデキサメタゾンを省略する目的でパロノセトロンを用いる選択肢がある」との記載があり、デキサメタゾンの投与について主治医とよく検討が必要です。

味覚障害や悪心・嘔吐の発現による食事摂取量が減少しているにもかかわらず血糖降下薬をいつもどおり服用すると、過度に血糖が下がるおそれがあります。食事摂取量に変化がないか、変化があった場合の対応についてあらからじめ患者さんと相談しておく必要があります。低血糖症状をについてもしっかり理解してもらいましょう。

糖尿病患者さんは末梢神経障害を合併していることがあり、抗がん剤の中でも末梢神経障害の副作用のある薬剤を使用する場合は、末梢神経障害が重症化したり、回復に時間を要することが予想されます。

腎障害の程度についても事前に評価し、投与後の変動について注意深くモニタリングしましょう。

糖尿病治療薬の中でSGLT2阻害薬は、脱水や尿路感染症の副作用があり、嘔吐や下痢による脱水の助長や骨髄抑制による感染症以外に尿路感染症による感染がある点を踏まえて、発熱時には感染部位、原因菌を考慮する必要があると考えます。

骨髄抑制により赤血球の寿命が短縮し、HbA1cが偽性低値をとることがある点を考慮する必要があります。投与当日の血糖値が徐々に高くなってきているのにHbA1cが低いときはその可能性があるかもしれません。血糖値の変動をモニタリングと患者さんの自覚症状(口渇、多飲、多尿など)を確認しましょう。

糖尿病患さんに対して注意が必要な抗がん剤

mTOR阻害薬:

エベロリムス:添付文書より高血糖(8.6%)、糖尿病の発症又は増悪(2.7%)の頻度の記載があり、「高血糖があらわれることがあるので、投与開始前及び投与開始後は定期的に空腹時血糖値の測定を行うこと。また、本剤の投与を開始する前に血糖値を適切にコントロールしておくこと。」とありますので、対応が必要です。

テムシロリムス:添付文書より高血糖26.2%、「 高血糖があらわれることがあるため、投与開始前及び投与開始後は、定期的に空腹時血糖値の測定を行うこと。」とこちらも同様の記載があります。

L-アスパラギナーゼ重篤な急性膵炎が起こることがあるので、本剤投与中は患者の状態を十分に観察し、腹痛、嘔吐、アミラーゼ等の膵酵素の上昇等の症状があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、重篤な糖尿病が起こることがあるので、本剤投与中は患者の状態を十分に観察し、口渇感、多飲多尿等の症状があらわれた場合には休薬又は投与を中止し、適切な処置を行うこと。」と記載があり、急性膵炎による2次的な糖尿病の発症が考えられます。

免疫チェックポイント阻害薬:頻度は低いですが、1型糖尿病(劇症型には注意)を発症することがあり、患者教育を含めて注意が必要です。

薬剤師
薬剤師

その他、ステロイドを多く使用するレジメンやオランザピンを使用する場合などを含め、血糖値の変動を念頭に副作用をモニタリングしましょう。

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