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保湿剤を1ヵ月塗ってみました!効果と問題点を検証

実際にやってみた!シリーズ

EGFR阻害薬(抗EGFR抗体、チロシンキナーゼ阻害薬)やマルチキナーゼ阻害薬を使用している患者さんに保湿の意義と保湿剤の継続使用するよう指導されていると思いますが、実際に自ら保湿剤を継続して塗布した経験がある方は少ないのではないでしょうか。これまで「実際にやってみたシリーズ」として、「爪のスクエアカット」「泡で洗顔、洗体」などの経験をお伝えしましたが、今回も「実際に保湿剤を1ヵ月継続して塗布してみました」ので、ご紹介します。

基本的にはEGFR阻害薬やマルチキナーゼ阻害薬を使用している患者さんは、保険適応のあるヘパリン類似物質クリームやローション、尿素含有クリームなどを処方されて使用されますが、これらは処方箋がないともらえないので、今回私が使用したのは、「べーテル®保湿ローション」です。

これは薬局でもネットでも購入可能です。市販の保湿剤をいくつか試してみましたが、少量でものびが良くて、塗りやすく、べたつきが少ないことが特徴で、非常に使いやすいと感じました。

べーテル®保湿ローションは、pH約5.5の弱酸性で、無香料、無着色、ノンアルコールで、保湿成分としてセラミドAP、ヒアルロン酸ナトリウム、アルギニン、ベタインが、皮脂膜用作用を示す成分としてワセリン、スクワラン、グリセリンを含有しているため、乾燥した角質に対して複合的に作用し、角質の水分保持を高めると考えられているとのことです。

保湿剤を1か月間ただ塗るだけでなく、保湿剤の効果と問題点を身をもって検証することを目的に、ちょっとした実験をやってみることにしました。

方法:自分の右腕と左腕の皮膚の状態の変化を比較することとし、左腕にはこれまでどおりの生活環境(入浴時の腕の洗い方)を実施し、右腕は泡立てた泡で洗い、べーテル®保湿ローションを1日3回1プッシュ分塗布しました。開始前と塗布開始から1か月後に皮膚の水分と油分量を計測しました。塗布から1か月後から右腕の塗布をやめ、経時的に水分と油分量を計測しました。

評価した項目:特に何もしない普段通りの左腕と保湿剤を塗布を継続した右腕の水分と油分量、皮膚の見た目、触れた時の感触、塗布中断からの水分と油分の変化としました

測定器具:研究で使用される携帯型の水分測定器は非常に高額のため、今回は「美ルル スキンチェッカー(綺麗堂)3000円」を使用しました。

1か月塗布後の結果

皮膚の見た目:見た目はほぼ変わりはありませんでしたが、肘については左はカサついていましたが、右はカサつきがなくうるおいを感じました。

皮膚を触れた感触:左はやや乾燥ぎみ、右はしっとりとしているが、さらさら?つるつる?した感触です

水分と油分の変化

べーテル®保湿ローションを継続して塗布した右腕の水分量は、左腕に比べ+10%の増加が見られました。一方、油分は塗布しなかった左腕に変化はなく、塗布した右腕の油分の減少が見られました。

まず水分量については皮膚はもともと乾燥ぎみ(両腕とも開始前は30%以下)であること、保湿剤の継続塗布により水分量が増加したのは予想どおりでした。

一方、驚いたのは油分です。べーテル®保湿ローションには皮脂膜用作用を示す成分としてワセリン、スクワラン、グリセリンを含有しているため、継続塗布により油分は増加するのではないかと思っていましたが、予想とは反対に油分はべーテル®保湿ローションを塗布した方が低い結果が得られました。洗顔後に、特に女性で乳液などを顔に塗布されている方はお気づきかと思いますが、皮膚は洗った後何もしないでいると、失われた油分を補おうとして油分をどんどん分泌させようと反応するそうです。今回の私の実験でも明らかに塗布したほうが油分が少ない(約半分程度)ことを確認できました。

薬剤師
薬剤師

油分の分泌が多いと抗がん剤投与により過敏になっている皮膚にとっても良くなさそうですね。そういった意味でも油分を含んだ保湿剤は副作用対策として効果がありそうです。

次に保湿剤の塗布をやめた後の水分の変化をグラフにしてみました。

おおよそ3日間で保湿剤の塗布を1か月継続した右腕は、左腕と同等になりました。大きな差はないものの保湿効果は、ある程度持続することがわかりました。

保湿剤の塗布は、入浴後すぐにした方がよいとされています。そこで入浴後の水分量の変化を調べてみました。(右腕は1ヶ月保湿剤を塗布した後の状態で入浴後に保湿剤は未塗布、左腕は普段通り)

水分量が少なかった左腕は入浴後、水分量が増加したが、右腕とほぼ同じ推移を示しました。入浴から60分後に右腕は入浴前の水分量より若干減少(37→34%)しましたが、翌朝、36%となっていました。他の研究でも「入浴後は急速に角質層の水分の蒸散が起こり角質水分量は入浴後20分で入浴前の値になり、1時間後には入浴前よりも低くなる」(新井香奈子:ドライスキンケアのエビデンス,臨床看護,29(13),2022-2031,2003)と報告されている。よって一般的に「皮膚の油分の補給は入浴直後のまだ皮膚に水分が留まっている30分以内に行うことが効果的である」との推奨を身をもって経験することができました。

保湿剤の使用を指導するとき、1回に塗布する量、場所、回数を指導するかと思います。今回は腕のみでしたので、比較的塗布しやすい場所です。一般に塗布する胸部は普段服の下であり、背中などは自分ではなかなか塗布することができません。1日3回を続けて塗布するとしましたが、お昼の塗布を忘れることが時々ありました。塗布する部位に何らかの症状が現れていれば、改善させたいという意識があるため塗布を忘れないかもしれませんが、症状が発現していない時期の予防的な塗布を継続することは難しいのではないかと感じました。そこで今回使用した水分測定器を使用すると、目で見て水分量の増減が確認できるため、アドヒアランスの向上のために効果的ではないかと思われました。

あくまで今回の実験は正常な皮膚の成人で行った1サンプルのみの実験であり、測定機器についても簡易的なものを使用しており、正しく検証したものではありません。この結果をもって何かを推奨することはできませんが、実際に自分で体験したことで、より患者さんの立場に寄り添った指導に生かしたいと思いました。

べーテル®保湿ローションは薬局でもネットからでも購入できます。もし自分も試してみようと思ったら是非やってみませんか、新しい発見があるかもしれません。


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