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胃癌の化学療法 HER+SOX療法

胃がん

HER2陽性の胃癌患者さんに対する化学療法として、条件付きの例えばシスプラチンの投与が困難な場合、S-1+オキサリプラチンのSOX療法に加えて、トラスツズマブを投与します。

S-1 80mg/m2(分2)2週間投与し1週間休薬に、L-OHP 100 (or 130)mg/m2 day 1+トラスツズマブ6mg/kg day1 投与の3週間を1サイクルとして繰り返します。

抗がん剤投与前に確認・評価すべきことについて詳細は過去の記事をご参照ください。

HER+SOX(トラスツズマブ点滴+S-1内服+オキサリプラチン点滴)療法について事前に確認・評価することは以下になるかと思います

  • ▢ B型肝炎ウイルス再活性化のリスク(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体の有無)
  • ▢ 口腔粘膜炎の予防として歯科を受診し、口腔ケアを開始
  • ▢ 治療方法選択の妥当性(内服併用レジメンにおける服薬管理能力の評価など)
  • ▢ 悪心・嘔吐のリスクを考慮し、標準的支持療法でよいか評価(HER+SOXは中等度リスク)
  • ▢ 併存疾患治療薬との相互作用の有無(ワルファリンのコントロールなど)
  • ▢ 腎機能、肝機能を考慮した初期投与量の確認
  • ▢ 発熱性好中球減少症、骨髄抑制のリスク:MASCCスコアの実施
  • ▢ 口腔粘膜炎:口腔内の観察(コロナ禍では十分な対策が必須)
  • ▢ 排便状況(下痢または便秘):コントロール不良であれば調整
  • ▢ 間質性肺炎の既往:発現頻度の高い抗がん剤については血液検査、CT等で専門医による事前評価
  • ▢ 血糖コントロール:今後、制吐薬としてデキサメタゾン長期使用により影響がでる可能性がある
  • ▢ 心疾患の有無、心機能の評価:アントラサイクリン系の累積投与量
  • ▢ 胸部へ放射線を照射中の患者さん(心不全等の心障害があらわれやすい)
  • ▢ 高血圧症の患者さん又はその既往歴のある患者さん(心不全等の心障害があらわれやすい)
  • ▢ その他(血圧、脱毛、しびれ、味覚障害、筋肉痛、関節痛など):併存疾患として治療中または既往のある症状が増悪の可能性
  • ▢ 安静時呼吸困難(肺転移、循環器疾患等による)のある又はその既往歴のある患者さん(Infusion reactionが重篤化しやすい)
  • 禁忌の患者
  • ▢ 重篤な心障害のある患者

HER+SOX療法の根拠文献としては、未治療のHER2陽性胃癌に対するSOX130とTrastuzumabの併用療法(HER-SOX130)の有効性と安全性の評価のために計画された、単アームの多施設共同第II相試験になります。

A phase II study (KSCC/HGCSG/CCOG/PerSeUS1501B) of trastuzumab plus S-1 and oxaliplatin for HER2-positive advanced gastric cancer.

主要評価項目の奏効割合は82.1%(95% CI: 67.3-91.0)でした。また、病勢コントロール率は87.2%(95% CI: 73.3-94.4)でした。

有害事象は、Grade 3/4の血液毒性は、血小板減少7例(17.9%)、好中球減少5例(12.8%)、貧血4例(10.3%)に認められたが、発熱性好中球減少症は認められませんでした。また、grade 3/4の非血液毒性は、食欲不振7例(17.9%)、低ナトリウム血症4例(10.3%)、悪心および下痢が3例(7.7%)ずつに認められた。末梢神経障害はgrade 3の2例(5.1%)を含め全gradeで32例(82.1%)に認められたとのことです。

有害事象については解析対象が39名ですので、データ数としては少ないと思われますので、トラスツズマブ単剤やSOX療法での他の臨床試験のデータを考慮して、モニタリングするとよいかと思います。

副作用への介入ポイント

神経障害 :急性症状、持続性の症状(8サイクル以降から重篤化)が起こる。生活に支障がないか、影響があるようなら申し出るよう指導する。寒冷刺激で電撃痛を感じるため、点滴から5日後ごろまで冷たい物を直接触れないよう指導する。

アレルギー:初回または9~10回目以降に起こりやすい。点滴中に違和感を感じたらすぐに申し出るよう指導する。抗アレルギー薬で予防することがある。

心障害:既往歴がなければ早期発現の可能性は低いが、定期的なモニタリングを実施する

口内粘膜炎:投与開始2〜3週目発現しやすい。開始前からの口腔ケアの実施と症状発現時は、局所の治療薬として、軟膏ではトリアムシノロンアセトニド口腔用軟膏、デキサメタゾン口腔用軟膏など、含嗽剤等ではアズレンスルホン酸ナトリウム水和物などを使用する。

色素沈着:投与後2~3週目頃より顔面、爪、手、足などに色素沈着が発現することがある。スキンケアの実施が大切。日光に当たりすぎると悪化するため、日焼け対策を指導する。皮膚や爪の色の変化をカバーするためには、化粧をしたりマニキュアの使用を勧める。

流涙:涙道が閉塞することで流涙が症状とした現れます。不可逆的となることもあるため、症状に気がついたら早期に眼科を受診を促しましょう。

発疹:投与開始直後から2週目での発現が多い。投与を休薬または中止し、対症治療を行う。外用療法として、ステロイド剤、白色ワセリン、ヘパリン類似物質などの塗布を行うとともに、症状に応じて全身療法として、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤などの投与を行う。特に発熱を伴う粘膜のただれなどが見られたら、皮膚科へすぐに受診する。

相互作用:S-1とフェニトインまたはワルファリンとの併用によりフェニトインおよびワルファリンの作用が増強されるおそれがあるため、初回投与は特に血中濃度やINRの推移を十分にモニタリングする。

副作用については上記以外のものが発現することもあります。いつもと違う症状に気が付いたらがまんせず申し出ていただくよう指導しましょう。

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