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irAEの発現と免疫チェックポイント阻害薬の有効性には関連がある!?

免疫チェックポイント阻害薬

がん治療には、手術療法、放射線療法、化学療法の3つの柱に加え、4つ目の柱として免疫療法が広く認知されるようになりました。免疫療法は従来の治療(殺細胞性の抗がん剤)と比べ副作用の発現が少ないという特徴がありますが、免疫力を高めることにより、免疫介在性有害事象(immune-related Adverse Events)が起こることがあります。頻度は少ないですが、発現すると重篤化するものがあり注意が必要とされています。

免疫チェックポイント阻害薬の作用機序

irAE(免疫介在性有害事象)

irAEの発現機序とステロイドの作用

については、過去の関連記事をご参照ください。

薬による作用のうち、期待される作用は効果として、期待されない作用は副作用と認識されます。多くの抗がん剤は、がん細胞だけでなく、正常細胞にも作用してしまい、これが副作用というわけです。ですので副作用の発現と薬の効果の関連性が確認されているものがいくつかあります。好中球減少や皮膚障害などとの関連性についての報告があります。irAEについても抗がん剤の有効性との関連について報告されています。次の論文は、「非小細胞肺癌における免疫関連の有害事象とニボルマブの有効性との関連」に関するものです。

「Association of Immune-Related Adverse Events With Nivolumab Efficacy in Non–Small-Cell Lung Cancer」JAMA Oncol. 2018;4(3):374-378 

要約すると、患者背景は、年齢中央値68歳(33歳-85歳)、男性67%(N=90人)、女性33%(N=44人)であった。irAE発現率は51%(N=69人)の患者で確認され、その内グレード3/4の発現率は9%(N=12人)、ステロイドによる治療が必要な患者は18%(N=24人)であった。

試験の結果、 6週間ランドマーク解析時点においてirAEを発現した患者とそうでない患者の無増悪生存期間(PFS)は9.2ヶ月(95%信頼区間:4.4ヶ月-未到達)に対して、4.8ヶ月(95%信頼区間:3.0-7.5ヶ月)(P = 0.04)、全生存期間(OS)は未到達(95%信頼区間:12.3ヶ月-未到達)に対して11.1ヶ月(95%信頼区間:9.6ヶ月-未到達)(P = 0.01)であった。

多変量解析によればirAEとPFSは正の相関関係があり(ハザード比 = 0.525, 95%信頼区間:0.287-0.937,P = 0.03) 、OSも正の相関関係がある(ハザード比 = 0.525, 95%信頼区間:0.101-0.667,P = 0.03) ことを示していた。

当院においてもirAEの発現がある場合、生存期間の延長の傾向がみられたという同じ研究結果が得られました。すなわちirAEを早期に発見し、重症化を防ぎ、早期に対応することは治療の継続につながり、生存期間や無増悪生存期間の延長につながると考えられますので、薬剤師として是非、取り組むべきことだと思います。

irAEの早期発見・早期対応については過去の記事をご参照下さい。→「irAE(免疫介在性有害事象)を早期発見・対応するために

またirAEについて詳しい解説を知りたい場合は、「irAEアトラス」「irAEナビ」がおすすめです。

患者さん
患者さん

1週間前から喉がすごく渇いて、尿も沢山でて

体がだるかった。次回の受診まであと少しだからと思って

家で我慢してました・・・

薬剤師
薬剤師

口渇、多尿、倦怠感・・・

高血糖症状!? 

もしかしたら1型糖尿病が発症したのでは?

免疫チェックポイント阻害薬による劇症1型糖尿病の発現頻度は、約0.2%程度(報告により異なります)です。早期発見する方法として、患者さんには頻度は低いが、劇症1型糖尿病が発現する可能性があることをあらかじめ伝え、高血糖の自覚症状として全身倦怠感、多尿、食欲不振、体重減少などの症状に気がついたらがまんせず病院へ連絡するよう指導しましょう。施設によっては患者さんに尿糖検査薬を購入していただき、自分でチェックするという取り組みをされている場合もあります。

薬剤師
薬剤師

患者さんの中には、副作用症状に気がついても我慢する方がいます。

我慢せず、早めに副作用に対応すると

治療が楽に受けられるということをしっかり理解してもらいましょう

保険薬局と連携をとり、電話サポートで副作用を確認することも

これからの新しい方向性ですね。

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