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HER2(+)の治癒切除不能な進行・再発の胃癌の薬物療法

胃がん

胃癌治療ガイドラインには、HER2陽性の患者さんの治療についての記載があります。IHC3+またはIHC2+かつFISH陽性症例にトラスツズマブを含む化学療法を行うことが推奨されています。

カペシタビン(または5-FU)+シスプラチン+トラスツズマブ療法が推奨されるレジメンである(推奨度1)。

3週スケジュールのS-1+シスプラチン+トラスツズマブ療法は,第Ⅱ相試験の結果が報告され,選択可能なレジメンであるが,有効性と安全性のデータの蓄積は十分とはいえない(推奨度2)。

との記載があります。

HER2陽性率

日本人を対象としたJFMC44-1101研究で、日本人の胃癌患者さんのHER2陽性率は、21.1%(95%信頼区間:19.9-23.2)だった。免疫染色(IHC)3+または2+かつFISH陽性例(HER2強陽性例)は15.5%であったとの報告されています。

従来からある治癒切除不能な進行・再発の胃癌患者さんの化学療法にHER2抗体のトラスツズマブの上乗せ効果を示した研究として、「TOGA試験」があります。

HER2過剰発現が認められる胃または胃食道接合部の腺癌を対象とした、Trastuzumabの有効性と安全性を検証する国際多施設共同無作為化第III相試験です。適応症例594例が「Capecitabineまたは5-FU+CDDP(XP/FP)群」と「Capecitabineまたは5-FU+CDDP+Trastuzumab(XP/FP+Tmab)群」に1:1に無作為化された(解析対象は584例)。

主要評価項目である全生存期間(OS)の中央値は、XP/FP群11.1ヵ月、XP/FP+Tmab群13.8ヵ月であり、Trastuzumab併用により有意な延長を認めました(p=0.0046)。
サブグループ解析では、HER2発現度で「IHC 0または1+/FISH陽性(低発現)群」と「IHC 2+/FISH陽性またはIHC 3+(高発現)群」に層別化し、比較検討された。その結果OS中央値は、HER2低発現群ではXP/FP群8.7ヵ月、XP/FP+Tmab群10.0ヵ月、HR=1.07(95% CI: 0.70-1.62)であり、Trastuzumabの有効性は示されなかったが、HER2高発現群ではXP/FP群11.8ヵ月、XP/FP+Tmab群16.0ヵ月、HR=0.65(95% CI: 0.51-0.83)とTrastuzumabによるOS延長効果がより強調された。

Grade 3以上の治療関連有害事象は、XP/FP群68%、XP/FP+Tmab群68%であり、減量や中止が必要となったのは82% vs. 84%と、両群に有意な差は認めなかった。
最終投与60日以内死亡はXP/FP群7%(20例)vs. XP/FP+Tmab群5%(15例)であったが、治療関連死亡は1%(3例)vs. 3%(10例)であった。
XP/FP+Tmab群で5%以上に発現したGrade 3以上の治療関連有害事象は、好中球減少(27%)、貧血(12%)、下痢(9%)、嘔気(7%)、嘔吐(6%)、食欲不振(6%)、発熱性好中球減少症(5%)、血小板減少(5%)、無力症(5%)であり、下痢(9% vs. 4%)以外はXP/FP群と頻度は同程度であった。Grade 3以上のinfusion-related reactionはXP/FP+Tmab群において6%(17例)で認めたが死亡例はいなかった。

その他、HERBIS-1A試験、WJOG7212G試験が実施され、いずれも中央判定による奏効割合(RR)を主要評価項目に設定した第II相試験でpositive trialであった。全生存期間(OS)は、それぞれ16.0ヵ月、16.5ヵ月であり、ToGA試験のHER2高発現群(IHC 2+/FISH +またはIHC 3+)とも数値上、ほぼ同様であった。

これによりHER2陽性の胃癌患者さんの治療として、トラスツズマブを併用したレジメンが選択されています。

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