栄養吸収への影響が起こります
術後長期間経過すると、種々の栄養吸収障害が起こってくる可能性があります。例としてビタミンB12や鉄欠乏による貧血、ビタミンDとカルシウムの吸収不良による骨粗鬆症などが有名です。
ビタミンB12欠乏
ビタミンB12は胃で分泌された内因子と結合することで回腸末端から吸収されます。胃切除により内因子との結合が不十分になると腸から効果的に吸収されないためビタミンB12欠乏が起こります。比較的晩期の合併症であるとされているものの、ある観察研究の報告では術後4年におけるビタミンB12欠乏率は、胃全摘患者で100%、幽門側胃切除患者では15.7%であったとしている。また胃全摘群ではビタミンB12欠乏までに要する時間は15ヶ月であったとのことで、比較的早い段階で起こりうることを想定しておいたほうがよいと思われます。
ビタミンDとカルシウム吸収不良
胃切除後の骨粗鬆症は教科書的な胃切除後症候群の1つです。また胃切除が骨代謝に影響し骨折リスクが高まることが複数報告されています。原因としては、そもそもの食事由来のカルシウムやビタミンDが減ること、胃酸が少なくなることでカルシウムの吸収が低下すること、脂溶性ビタミンであるビタミンDの吸収が低下することが知られています。米国NCCNのガイドラインでは鉄やビタミンB12を含む栄養素欠乏状態のモニターを行うことを推奨しています。
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